LLCコンバータ<br>第1回 概要・特徴編

LLCコンバータ
第1回 概要・特徴編

LLCコンバータとは

高効率、低ノイズで知られているLLCコンバータですが、近年ではテスラの車載充電器として使用されたことで、注目を集めています。
この記事では、LLCコンバータの基本的な回路や特徴について記載していきます。

本記事には、サンプル回路もありますので、是非ご利用ください。

それでは、始めましょう。

基本回路

LLCコンバータは、LLC共振型DCDCコンバータとも呼ばれ、LとLとCで共振動作をさせる、DCDCコンバータです。
まずは、回路を見てみましょう。

【図1】 様々なLLCコンバータ回路

図のようにLLCコンバータを実現するための回路は様々な方式があります。
LLCコンバータのLとLとCは、共振で使用されるL、L、Cのことで、トランスの励磁インダクタンス(Lm)、トランスと直列に、コイル(Lr)とコンデンサ(Cr)を接続することで構成されます。Lrはトランスの漏れインダクタンスを用いる場合も多く、基本回路がシンプルなのが特徴です。

二次側はダイオード二つで構成する場合も、4つで構成する場合も整流することが目的なので、基本的には動作は変わりません。
また、スイッチと並列に接続されているダイオードとコンデンサはスイッチング素子であるFETの寄生容量と寄生ダイオードです。

強み弱み

LLCコンバータの強み弱みを解説していきましょう。

強み

  • 他のコンバータと比較すると、少ない部品要素で絶縁型のコンバータを構成できる。
  • ソフトスイッチングにより、低ノイズ、高効率なコンバータを実現できる。

弱み

  • 制御範囲が小さく、昇降圧比が大きいアプリケーションには使いづらい
  • 軽負荷の時に出力を絞りきれなかったり、重負荷の時にトランスのパラメータによって出力を出せなくなったりと、トランスおよびLLCのパラメータの設定が難しい

このように、使用範囲が合えば、ソフトスイッチングが可能なコンバータとして、選択候補の代表格になります。

また、最近では、デジタル制御によってさまざまなスイッチング方法を組み合わせ、欠点を補うような使い方ができるようになったため、注目されている回路だと筆者は考えています。

出力特性について

LLCコンバータは、以下の図のような特性となります。
横軸にスイッチング周波数、縦軸に、出力電圧や電流を取ります。

【図2】 LLCコンバータの出力特性 

ここで、fmfrは、Lr + Lm + Crでの共振周波数と、Lr + Crでの共振周波数の二つの共振周波数のことで、これらの設定で出力特性が決まります。

一般的に制御で用いられる範囲は、fmよりも右側で、単調減少している範囲を用います。
ご覧の通り、周波数を上げていくと出力電圧は下がっていきますが、どこまでも下がっていくわけではなく、あるところまでしか下げることができません。

また、負荷によっても特性は異なります。
ここでは軽負荷と重負荷という表現をしていますが、設計時はこの辺りの条件をよく考えてLLCのパラメータを設定する必要があります。

周波数変調制御について

LLCコンバータを制御するためには、出力特性にある通り、スイッチング周波数を制御して出力を変更します。
このような制御を、周波数変調制御と言います。

LLCコンバータでの周波数変調制御は、スイッチの時比率を0.5ずつに保ったまま周波数を変動させていきます。

まとめ

第1回は、LLCコンバータの基本回路と強み弱み、出力特性などについて簡単に紹介いたしました。
次回以降は、より詳細にLLCコンバータの特徴である、ソフトスイッチングについてや、出力特性についてなどを紹介していきます。

本連載記事で使用するサンプル回路を以下からまとめてダウンロード可能です。
是非ご利用ください。

シミュレーションモデルについて

本モデルは、パワエレ向け高速回路シミュレータScideam(サイディーム)で動作可能です。
本記事のモデルは以下からダウンロードしてください。

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投稿者:

中村 創一郎

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