GaNモデルのシミュレーション比較<br>第1回 スイッチング速度の比較

GaNモデルのシミュレーション比較
第1回 スイッチング速度の比較

昨年11月末にリリースしたScideam(サイディーム)のPower Paletteオプションでは、SiCやGaNなどの次世代半導体モデルのシミュレーションが可能になりました。

今回の記事ではScideamのGaNモデルとメーカー提供のLTspiceモデルを使用して、スイッチング速度や損失のシミュレーション結果を比較してみたいと思います。

Scideamの回路モデルはサンプルもございますので、ぜひお試しください。

GaN素子と計測回路について

【図1】スイッチング速度計測用のモデル

シミュレーション波形の比較

続いて、双方のシミュレータでターンオン波形を比較してみます。

スイッチング時間はドレイン・ソース間電圧の10%~90%となる時間を計測するので、その通りにカーソルを合わせるとターンオン時間はLTspiceで2.0ns、Scideamでは2.97nsです。

【図2】ターンオン時間の計測

同様にターンオフ時間を計測すると、LTspiceは6.90ns、Scideamは6.70nsでした。

【図3】ターンオフ時間の計測

双方のスイッチング時の波形はほぼ一致しており、スイッチング速度については、ターンオン時間に約1nsの差がありますが、ターンオフ時間についてはよく一致しています。

データシートとの比較

次に、データシートのスイッチング速度との整合性を確認してみます。

データシートのターンオン時間Trは3.7ns、ターンオフ時間Tfは5.2nsで、まとめると表1のようになります。

ターンオン時間については、データシートが3.7ns、LTspiceが2ns、Scideamは2.97nsなので、データシートと比較すると、LTspiceは46%早く、Scideamは20%早い結果となります。一方のターンオフ時間は双方とも30%前後遅い結果となりました。

【表1】 データシートとのスイッチング速度の比較
【表1-a】 LTspice解析結果

項目DataSheet (ns)時間(ns)時間差(ns)誤差(%)
Tr3.72-1.7-46
Tf5.26.91.733

【表1-b】 Scideam解析結果

項目DataSheet (ns)時間(ns)時間差(ns)誤差(%)
Tr3.72.97-0.73-20
Tf5.26.71.529

データシート値との誤差は、nsオーダーの微小な時間であることや、カーソルを正確にあわせるにも限界があることを考えると、双方のシミュレータともまずまずの結果と言えます。

本連載記事で使用するサンプル回路をダウンロード可能です。
是非ご利用ください。
回路モデルは「SwitchingTimeTest_GS66508T.scicir」です。

シミュレーションモデルについて

本モデルは、パワエレ向け高速回路シミュレータScideam(サイディーム)で動作可能です。
本記事のモデルは以下からダウンロードしてください。

まとめ

今回はGaN Systems社のGS66508Tを対象に、LTspiceとScideamそれぞれでデータシートと同条件の回路を作成し、スイッチング波形のシミュレーション結果を比較しました。

双方の波形はほぼ一致しており、両モデルは同等であることが確認できました。

スイッチング速度をデータシート値と比較した場合、やはり、多少の誤差が含まれることはやむを得ませんが、実際のデバイスを再現できていることが確認でき、このGaNデバイスに関してはLTspiceよりScideamの方がデータシート値に近いことも分かりました。

次回はダブルパルス試験回路モデルを作成し、スイッチング損失のシミュレーションについて比較したいと思います。

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投稿者:

角 詩織

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